2011年9月:【応急仮設住宅】

 皆さんこんにちは、渡邉です。気が付けばもう9月です。すでに今年も3分の2が終わってしまいました。歳をとると1年が早く感じると言われますが、最近は歳をとったのか、あっという間の8ヶ月間でした。今回の「ひげ日記」は、7月初旬に「応急仮設住宅の視察」で福島県に行ってきましたので、その時の事を書かせて頂きたいと思います。

 福島県に到着後いわき市で津波被害を受けた町をまわりました。海沿いの住宅地では、土台と基礎だけが残りあとは全て流され一面何も無くなっているという状況が広がっていました。また、コンクリ-製の大きな堤防が倒され、それが道路の反対側まで多数流されている状況を見てしまうと、建物の構造や耐震性能がどうだったのかなどということより、人が住んではいけない場所があるんだと感じました。

 本当に津波の力はすさまじく言葉も出ませんでした。

 木造応急仮設住宅の視察では、工事中・完成併せて4ヶ所の現場を案内して頂きました。皆さんもニュ-スなどで応急仮設住宅の建設が行われているという事はご存知だと思います。しかし、どのような住宅が建てられているのかという情報は少ないので、私が見てきた木造応急仮設住宅についてご説明させていただきます。

 構造は木造在来工法で広さは1戸あたり9坪(18畳)が中心でした。基礎は無く、松(杉)杭の上に建物が建てられていました。間取りは、和室4.5畳×2室、DK+玄関で4.5畳、トイレ・洗面脱衣室・浴室等で4.5畳でした。

 各戸にエアコン1台、照明器具は全室に設置済み、レ-スカ-テンに遮光カ-テンも付いていました。浴室以外の部屋の出入口に建具は無く、カ-テンまたはアコ-デオンカ-テンで仕切られていました。床・屋根や外壁には断熱材もきちんと入り、外壁は杉の無垢板張り仕上げとなっていました。家族構成によっては狭いと思いますが、仕様等は仮設住宅としてはなかなかだと感じました。

 今回の応急仮設住宅には大きく分けて3つのタイプが存在するそうです。一番多く建設されたのが、事業用プレハブメ-カ-が建てたもの(イメ-ジとしては、建設現場や選挙の時に事務所として使われる感じの建物)が全体の65%程度、住宅メ-カ-が建てたものが25%、地元工務店が建てたものが10%程度という構成だそうです。

 最近では倉庫や事務所が専門の事業用プレハブメ-カ-の建てた仮設住宅と今回私が紹介させていただいたような仮設住宅との差があまりにも大きいため、入居者からも不平不満の声が上がっているそうで『仮設に格差』と新聞にも取り上げられたほどでした。

  さて、東日本大震災以降、これからの家づくりとして色々な会社が一斉に、「耐震」と「省エネ」を謳っています。本当にそう考え、そのための勉強をしてお客様にお薦めするのであれば、それは大変良い流れだと思います。しかし、このどちらも言うのは簡単ですが、実際の設計、さらに施工現場に落としこむことはそれほど簡単なことではありません。これらをきちんと行うためには、沢山の勉強と沢山の時間がかかるのです。

是非、2007年4月号(創刊2号)の「ひげ日記」を御覧ください。4年以上前に書いた「ひげ日記」のタイトルは「緑のカ-テン大作戦」でした。内容は今年大流行した緑のカ-テンの考え方(挟み込みで緑のカ-テンの育て方)と自立循環型住宅など太陽や風の力を使ったパッシブデザインについてでした。

 弊社ではずっと「耐震性能」と「快適で省エネ」が大切だと考え、実践してきました。そして『地震に強く住む人と地球にやさしい家』~快適で省エネなエコ・ハウス~を皆様に自信を持ってお薦めしています。家族の安全と地球の未来のために、「耐震」「省エネ」この流れが一時の流行で終わらない事を願っています。

㈱建築工房わたなべ 代表取締役 渡邉泰敏