2015年3月:【燃料電池自動車ってエコ!?】

皆さんこんにちは渡邉です。

 3月に入り、春はもうすぐそこまで来ています。今月号の「ひげ日記」では「究極のエコカー」と言われている、燃料電池自動車(FCV)について書かせていただきたいと思います。

■燃料電池自動車(FCV)って?

 FCVとは水素と酸素の化学反応で電気を発生させ、モーターを回す電気自動車の事です。昨年12月に発売を開始したトヨタのFCV、MIRAI(ミライ)は、官公庁を中心に受注が好調なようで、発売一ヶ月だけで1500台を受注したそうです。

 水素の充填時間はたった3分で航続距離は約650km。二酸化炭素は排出せず排出されるのは水だけで、地球温暖化の観点からも非常に素晴らしいと各メディアでは「究極のエコカー」と報じています。ホンダも2015年度中に新型の燃料電池自動車を発売することを発表しており、その航続距離は約700kmだということです。

 政府も次世代エネルギーとして水素の推進を行っており、FCVなどに数百億円規模の補助金を出すことを決定しました。東京都の枡添都知事も「FCVを6000台を導入するべき」と言い、地方自治体も水素エネルギーの推進を示唆しています。

■燃料電池自動車(FCV)は本当にエコなのでしょうか?

 まず問題は水素です。水素は石油のように掘れば出てくる天然資源では無く、石油や水の中にあります。そのため、そこから「水素」を取り出すためにエネルギーを必要とします。

 その過程でCO2を排出するのです。また水素の生産には巨大な施設が必要となり、充分な数の水素ステーション建設には莫大なコストも必要です。水素ステーションの建設費は、その場所で水素を生産する「オンサイト型」で1ヶ所あたり5億円、他の工場で水素を生産する「オフサイト型」でも1ヶ所あたり1億5千万円程度といわれています。

 オフサイト型の場合は別途巨大な水素工場の建設費用も必要になり、水素の運搬にも費用とエネルギーが必要です。経済産業省の水素・燃料電池プロジェクトのまとめた報告書によると、1kmあたりに排出する二酸化炭素の量は、電気自動車(EV)の52.5gに対しFCVは現状で144gから225gとガソリン車よりも多く、将来の進歩を勘案してもEVのほうがはるかに効率的だとしています。

 また水素はロケットの燃料にも使用されるほどの爆発力を持ち、破壊力がとても大きいので、簡単にカセットに充填したりパイプラインで送るという訳にもいきません。安全対策は万全だと信じたいのですが、水素自動車の事故を想像するだけで、私はとても恐怖を感じます。

■EVとFCV

 MIRAIの場合、満タン分の水素5kgの燃料補給にかかる時間は3分程度。急速充電でも30分掛かるEVと比較しても圧倒的に早く1回の充填で約650km走行できるそうです。EVの場合は200km程度しか走行できませんが、時間は掛かるがコンセントさえあればどこでも充電できるし、出先では急速充電器を使う事もできる(まだまだ多くありませんし、前の人が使っていると待ち人数×30分位待つ事になってしまう)

■一番気になる事

 水素製造時のCO2排出の問題はもちろんですが、現在一番問題だと思うのは、発電の大半を火力に頼っている日本の場合、火力発電で作った電気を使って水素を作り、それを圧縮して輸送して充填してFCVを走らせるという回りくどい事をするより、その電気で直接充電して電気自動車を走らせたほうが効率的だと単純に思うのです。

 もちろん、今後の技術革新等でどうなるのかは分かりませんが、将来はFCVが主流になると決め付けるのは時期尚早です。ヨーロッパの自動車メーカーでは、グリーンディーゼル、小排気量+ターボ、ハイブリッド(HV)、プラグイン・ハイブリッド(PHV)、など様々な組み合わせを進めています。トヨタやホンダは「HVから燃料電池車(FCV)へ」と舵を切ったと言われています。

VHSとベータやガラパゴス携帯の事が頭をよぎり私はちょっと心配しています。

最後に、2011年3月11日の東日本大震災からもうすぐ4年です。あの日起こった事、あの日見た事、あの日に感じたこと。そして被災地への支援の心も決して忘れぬようにしたいと思います。

それではまた、来月お会いしましょう。

㈱建築工房わたなべ 代表取締役 渡邉泰敏